モニターコントローラー「izarai」& VUメーター「FORENO」の活用術
- Hayakumo
- 4月5日
- 読了時間: 8分
更新日:4月6日
モニターコントローラーとVUメーターの導入は制作環境をどう変えるのか?

HAYAKUMOの代表製品であるでVUメーター「FORENO」
多くのスタジオやクリエイターが使用するこちらの製品ですが、実はモニターコントローラー「izarai」を導入することでより使いやすくなります。
この記事では、VUメーターの活用方法から「izarai」を活用したセッティング方法について触れて行きます。
VUメーターとDAW上のメーターとの違いは?
Uメーターの“VU”は「Volume Unit」の略称になります。実際の電圧(音声信号レベル)を、ヒトの聴感に近い時間的応答で平均値的に表示するよう設計されています。
DAWで各トラックに使われているメーターは「ピークメーター」と呼ばれ、これは「瞬間的な最大値を正確に把握」する為のメーターになります。
それに対してVUメーターは、人の耳が音の大きさを「瞬間的なピーク」よりも「ある程度時間幅で感じる平均的なレベル」に近いという点を考慮して設定されています。
※VUメーターは約300ms(0.3秒)程の応答速度で指針が動きます。
VUメーターはどんな時に使うものなのか?
次に、VUメーターの代表的な活用方法について見ていきましょう。
主な活用事例として、以下の 2点 が挙げられます。
1.音の平均レベルの管理

楽器やボーカルなどの音量バランスを取る際、VUメーターを見ながら「音の平均レベル」が適切かを判断するのに使われます。
ダイナミックレンジが比較的大きい楽曲でも、耳で聴いた印象とVUメーターの動きが比較的近く感じることが出来ます。
どのような楽曲であっても、詰め込める音には限界があり、ピークメーターだけでは捉えきれない「人の耳が感じる平均的な大きさ」を視覚的に把握できるため、楽曲のバランスやアンサンブルの作り込みに適しています。
2.レコーディング時のゲイン設定

VUメーターを使い、マイクプリアンプの入力ゲインを調整することで、クリップや歪み(ディストーション)を防ぎながら十分なレベルが得られるようにします。
まずはVUメーターで-10〜-5VU程度を目指してゆっくりゲインを上げていきます。その後、大きめの音が出た時に0VUの付近に達するかどうかチェックしていくと良い結果になりやすいです。
瞬間的に大きな音が出るソース(ピアノ・打楽器など)は一瞬針が0〜+1VU付近を指す程度に収め、ボーカルやベースなどの比較的持続成分の強い楽器は、針が0前後で落ち着くように調整のが一般的です。
楽曲制作で一番使用する用途は「異なる楽器のレベル調整」

楽曲制作の際に、「この楽器Aと楽器Bの音量を、だいたい同じにしたいなあ…」と思ったことはありませんか?
そんなときに活躍するのが、VUメーターです。
たとえば、下の画像のようにピアノトラックとアコースティックギターのトラックがあったとします。これらの音量感を大体同じに揃えたいと思ったとき、皆さんはどうしますか?
DAWのメーターはピークメーター(青色の括弧)なので、ここの数値を同じにしても、レベルメーター(黄色の括弧)の音量は揃いません。これでは、トラックの最大音量が一致しただけにすぎず、聞こえる音量感はバラバラになってしまいます。
それに比べて、VUメーターは「人の耳が感じる平均的な音の大きさ」を視覚的に表すものなので、各楽器の音量を揃えるのに適しています。
やり方は簡単です。揃えたい楽器を左右にPANで振り分けます。その状態で、VUメーターのLとRの針の触れ方がだいたい同じくらいになるように、どちらかのトラックの音量を調整します。
このとき、ボリュームフェーダーの調整だけでは音量が揃わない場合は、コンプレッサーなどのエフェクトを使って整えても問題ありません。

制作時のVUメーターとピークメーターの使い分け
まず、私たちが使用している主要なDAW上のメーターはピークメーターが基本となり、これは瞬間的な最大音量を感知するものになります。VUメーターとピークメーターの違いをまとめると以下のようになります。
【VUメーターの用途】
音量の平均値に近いレベルを測定する
応答速度が遅く、ピークは見えにくい
ミックスでは「“聴感上の音量”をおおまかに把握する」用途に向いている
【ピークメーターの用途】
音声信号の瞬間的なピークを測定する
応答速度が高速で、最大レベルがひと目でわかる
・デジタルクリップ(0 dBFS 超え)を防ぐ目的など、安全マージン確保に用いられる
VUメーター単体ではピークを捕捉しきれずクリッピングを見落とす場合があるため、ピークメーターも併用するのが大切です。
VUメーターの針の触れ方(アナログとプラグインの違い)
「プラグインのVUメーターではいけないの?」という質問は良く耳にしますが、アナログのVUメーターとプラグインのVUメーターは反応の違いがあります。
アナログのVUメーターを忠実にエミュレートしたプラグインであっても、アナログ機材固有の物理特性(コイル、ダンピング、針の慣性等)を完全に再現できるわけではありません。使用するPCとモニターのフレームレートも関係してくる為、結果として、ハードウェアとは若干表示が異なってしまいます。
「FORENO」はプラグインで再現不可能な針の細やかな動き

VUメーターも製品によって違いがあります。特に顕著なのが針の感度になります。
「FORENO」は扶桑計測器社製のメーターを採用。NHK規格BTS5703又はJIS C1504に基づき製作されており業務で使用する上での基準をきちんとクリアしております。
物凄く音圧の高い音であっても、一瞬音量が落ちる場面はあります。プラグインのVUメーターでは追従しきれない領域まで「FORENO」はタイミングを見逃しません。
扶桑計測器社の実力

扶桑計測器社はアナログメーターのエキスパートであり、音楽・放送業界からは特にその高い精度が評価されています。
このVUメーターは音のバランスを正確に測定できるため、スタジオでのレコーディング作業には欠かせない存在です。
アナログメーターは、細かい精密部品のすり合わせによって成り立つ製品です。その製造には高度な半田付け技術や繊細な手作業、経験に基づいた感覚を必要とし、日本の製造業が強みとするすり合わせ型の製品の代表格になります。
近年、こうした技能を有する技能者は日本全体で減ってきていますが、扶桑計測器社にはこの製造技術の要求を満たす高技能な作業者が複数在籍しています。彼らの技術と経験による高品質な製品はお客様から高く評価されています。
ATT(アッテネーター)の役割

FORENOには5段階で3dB毎に調整が可能なアッテネーター(減衰器)が搭載されています。
使用する機材や用途によっては、扱うオーディオレベルは大きく異なります。アッテネーターが調整段階で組み込まれていることによって、同じVUメーターであっても様々なラインレベルに柔軟に対応が可能です。
レコーディング機材の入力段からミキサーなどの送出段まで、複数の段階でレベルが変わる環境下でも、一貫して針の動きを目安として把握出来ます。
アッテネーターが搭載されていない製品も多く存在しますので、「FORENO」は様々な状況下で対応出来るVUメーターです。
何故「izarai」と「FORENO」は相性が良いのか?
VUメーターを導入するにあたり、よく問題となるのはオーディオインターフェイスからどのように接続するかです。
VUメーターを接続する場合、次の図のように、オーディオインターフェイスの別チャンネルに接続するか、スピーカーの間に挟む形で使用することが一般的です。ただ、この場合は少し問題あります。
まず、オーディオインターフェイス側の別ChにVUメーターを接続した場合は、DAWのMasterトラックのポストフェーダーを作成し、VUメーターへのアウトを作る必要があります。
次に、スピーカーとの間にVUメーターを接続した場合、オーディオインターフェイス側で音量調整をした際にVUメーターの触れ方に影響が出てしまいます。

Thru Out端子を活用したVUメーターとの接続
「izarai」を導入した場合、これらの問題は全て解決可能です。
VUメーターへの接続方法は次の図のように変化します。Thru OutにVUメーターを接続することで、スピーカーへのボリュームコントロールの影響を受けることのない環境を構築出来ます。

モニターコントローラー「izarai」が導き出す様々な可能性
「izarai」に搭載されたThru Out端子を使用して、VUメーター以外にも「小型ミキサーを活用した簡易Cuebox」「ヘッドフォンアンプの拡張」など使用用途は多岐に渡ります。
次回の記事では、Thru Out 端子をVUメーター以外の用途で使用する為のTipsをご紹介した記事「自宅レコーディングで活躍!モニターコントローラー「izarai」のThru Outを活用したCuebox構築術」はこちら!
VUメーター「FORENO」についての詳しい内容はこちら
モニターコントローラー「izarai」が気になった方はこちら
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