レコーディングエンジニア「Gregory Germain」 モニターコントローラー 「izarai」 ユーザーレビュー
- Hayakumo
- 4月24日
- 読了時間: 7分
今回は、モニターコントローラー「izarai」の開発段階からご協力いただいておりました、レコーディングエンジニアの「Gregory Germain」氏に、その後の使用感とミックスにおけるモニターコントローラーの活用法についてお伺いしてきました!

ー まず初めに、グレゴリさんの最近のそのお仕事はどんなことをやられているかお聞かせいただけますか?
グレゴリ:最近だと、「Little Glee Monster」や「生田絵梨花」、あと「Three1989」というエイベックスのグループを担当しています。 あとは、去年の大きな仕事でいうと「Mrs. GREEN APPLE」や、K-POP関係では「TWICE」などを手がけました。
去年あたりから海外の作品も増えてきて、「台湾」「香港」、そして「ヨーロッパ」のミックスの仕事も受けています。今はリモートで作業ができるので。
自分が関わった作品のクレジットがYouTubeなどで見られるので、ホームページを通じてメールで連絡をもらうことが多いですね。

ー 他でも何度も聞かれているかもしれませんが、グレゴリ様が日本の音楽シーンに興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?
グレゴリ:アニメの音楽から日本の音楽に興味を持ちました。定番ですが、「AKIRA」「攻殻機動隊」「マクロス」、それに「天空のエスカフローネ」。菅野よう子さんの作品をよく聴いていました。そこからアニメのタイアップ曲を聴くようになり、J-POPも聴き始めたという流れです。
ー 名作ばかりですね!そこからどのようにして日本にいらっしゃったのでしょうか?
グレゴリ:もう20年くらい前になりますが、ちょうどフランスの入門的な専門学校を卒業し、次のステップに進もうとしていた時、日本の学校を調べたら、学費がフランスと同じくらいだったんです。
当時、日本の学校の方が設備が充実していて、SSLのコンソールがあり、Pro Toolsも当時の最新バージョンが入っていました。何より、ミュージシャンやボーカリストと交流できる環境が整っていたんです。
フランスでは、エンジニアはエンジニアだけのコミュニティしかなく、ミュージシャンと交わることがなかった。
よく考えたら、ミュージシャンの友人やコネクションを作る方が面白そうだなと思いました。
ー フランスはそういった環境だったんですね。
グレゴリ:今ではAbbey Road Instituteなど有名な学校もできましたが、僕の時代はありませんでした。それに比べ、日本の音楽学校は設備がしっかりしていたし、日本の文化にも興味があったので、「行くしかないな」と決断しました。
HAYAKUMO izarai との出会い

── まず初めにizaraiの開発に関わっていただいた中で、プロトタイプを拝見した時の一番初めの印象をお聞かせいただけますか?
グレゴリ:確か最初のモデルはアウトプットが2つしかなかったですよね?僕が提案したのは、中央部分のスイッチ類、例えばDimスイッチやMonoスイッチの部分ですね。パッシブのモニターコントローラー自体珍しいので、面白いなと思いました。
── このスタジオにはサブウーファーが常設されていますが、その関係でもう一つアウトプットが欲しいなと感じられたのでしょうか?
グレゴリ:そうですね。サブウーファーって結構大事で、このC-SELECT機能があれば使い勝手が良くなると思いました。
アクティブとパッシブの違い
── モニターコントローラーにはアクティブとパッシブの2種類がありますが、それぞれのメリット・デメリットについてどうお考えでしょうか?
グレゴリ:簡単に言えば、パッシブは電気回路がない分、すごく素直な音が聞けるんですよ。インターフェースの特性をそのまま活かせるのが良い点ですね。
アクティブは、本当に高い部品やClass Aの部品を使わないと、どんどん劣化しちゃうんですよね。だから市場にあるアクティブのモニターコントローラーの価格が安いものは、安い部品を使っているからなんです。
だから、コストを抑えながらクリアな音を求めるなら、パッシブのほうが良いと思います。
「音」の第一印象
── 実際にizaraiの音を初めて聞いた時、どんな印象でしたか?
グレゴリ:すごく素直で、透明感のある音だなと感じました。パッシブのモニターコントローラー自体、あまり馴染みがなかったのですが、あまりガチャガチャしていなくて「おお、こういう感じか!」って思いましたね。
パッシブコントローラーを使用する場面

── izaraiは普段どんな場面で使われますでしょうか?
グレゴリ:まず、電源が不要というのが大きいですね。例えば、2つのスタジオを行き来して作業する時には、すぐにスピーカーに接続できるので便利です。場所も取らないし、電源トラブルの心配もないのがいいですね。
あとは、コンソール(卓)の音に依存したくない時ですね。SSLの卓とかもそうですけど、結局その卓の音のカラーが出てしまうんです。でもizaraiを使えば、そういった影響を排除できるので、より正確にモニタリングできます。
── コンソールをバイパスできるわけですね。
グレゴリ:そうです。特に、古いコンソールを使っているスタジオでは、メンテナンスが行き届いていない場合があるので、ノイズが出ることも多いんですよ。そういう時にも、izaraiが役立ちます。
また、すでにモニコンを持っている場合でも、スピーカーアウトが足りない時のサブモニコンとして使うのも便利ですね。例えば、ラジカセでチェックしたい時に、余っているアウトからつなげることで、別のモニコンとして活用できます。
ミックス作業中のizaraiの活用方法

── 今、自宅で作業する人の多くはオーディオインターフェースで音量調整をしていると思います。そういう人たちにizaraiをおすすめするとしたら、どんな使い方がありますか?
グレゴリ:まず、izaraiのロータリースイッチ式ボリュームは大きなメリットですね。こういうカチカチとしたロータリースイッチなら、同じ音量を正確に再現できます。
例えば、SPL(音圧レベル)を大体85dBになるように測っている人もいます。ミックスは一定の音量で行うことが重要で、特にバランス調整をする時には、音量の基準がブレないのが理想です。
少し静かにして聞きたい時にはDimスイッチが便利です。例えば、ミックスの途中で一瞬だけ音量を下げてバランスを確認したい時に良く使用します。
── ミックス中の音量はどのようにコントロールされていますでしょうか?
グレゴリ:やっている作業の内容によって異なります。例えば、ドラムやリズムセクションを作る時は、大きめの音で作業することが多いです。音のパンチや迫力をしっかり感じ取るためですね。
ミックスの終盤では、音量を下げて作業するようにしています。小さい音で聴くことで、ちょっとしたバランスのズレや、ミックスの中で埋もれてしまっている音がよく分かるんですよ。特にボーカルの調整では、音量を下げることで、「小さい音でもちゃんと聞こえているか?」を確認できます。
あと、スピーカーの特性も関係しています。大音量で作業すると、スピーカーが無理をして歪みが出たり、部屋自体が響いて正確な音が分かりにくくなることがあります。だから、最終チェックは小音量で行うのが多いですね。
ただ何となく大きい音で聴くのは避けて、大きい音と小さい音をうまくコントロールして聴く。そのバランスが重要です。
複数のスピーカーを用いたチェック方法

── 最終的なミックスの確認はどんなスピーカーで行っていますか?
グレゴリ:小型のスピーカーやノートパソコンのスピーカー、スマートフォンのスピーカーでもチェックしますね。最近のMacBookのスピーカーは意外と音が良くて、リスナーの環境を想定した確認に使えます。
── 昔はラジカセを使うことが多かったと思いますが、今でも活用されていますか?
グレゴリ:最近は少なくなりましたね。ラジカセは今の音楽の聴かれ方とは少しズレてきているので、Bluetoothスピーカーの方が現実的かなと思います。
── 本日はお忙しい中、貴重なお時間ありがとうございました。
グレゴリ:ありがとうございました。
HAYAKUMO「izarai」に関する詳しい内容はこちら
PROFILE Gregory Germain
フランス生まれ。日本文化好きが高じて20歳で来日し、語学学校を経て音楽専門学校に入学。
卒業後は、スタジオグリーンバード、ディグズ・グループでポップスやダンスミュージックを中心にハウスエンジニアとして活躍する。
2015年には世界的エンジニアからテクニックを学べる「Mix With the Masters」に参加し、南フランスのスタジオでトップクラスのミックステクニックを学ぶ。
2021年、独立しSonic Synergies Engineeringを設立。TWICE、King & Prince、Mrs.GREEN APPLE、Ado、Little Glee Monster、など多数のレコーディングに携わる。
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